Audio guide LIST
石の自叙 #4
キム・ヒョンホ(Kim Hyunho)
キム・ヒョンホは、東アジア絵画の感性を現代的な視点から再解釈するアーティストです。
海、風景、ドルメン(支石墓)など自然から着想を得ながらも、彼の作品は可視的な形にとどまらず、存在や
知覚の深層へと踏み込みます。
彼の代表作シリーズ《闇の絵(Painting of Darkness)》は、まさにその探求の結晶です。
一見すると漆黒のキャンバスに、彼は繊細なテクスチャーや形象を潜ませ、観る者の位置や動きによって、
まったく異なる感覚的体験が立ち上がります。
彼の創作の核には、「玄(ヒョン/げん)」という概念があります。
それは万物の根源であり、深遠なる闇の色。
幾重にも重ねられた墨とカーボンブラックの層は、単なる色面ではなく、時間、感情、思索の地層として現れ
ます。
その絵画は平面を超えて、身体的な体験として迫ってきます。
今回のビエンナーレでは、キム・ヒョンホは絵画・映像・彫刻的要素が融合した没入型インスタレーションを
発表します。
伝統的な水墨技法と素材実験が交差する空間は、墨芸術の可能性を拡張する試みです。
この闇のなかで、あなたは何を見るのでしょうか?
キム・ヒョンホの作品は、静かな内省の鏡の前に立つように、私たちを誘います。
彼の「闇」は空虚ではありません。
それは、感覚・記憶・存在を映し出す風景なのです。