隠された記憶-2201
オ・ユンソク(Oh Younseok)
オ・ユンソクは、癒し、回復、そして霊的エネルギーを中心に制作を行うアーティストです。
彼にとって文字とは、単なる伝達手段ではなく、
エネルギーと象徴を内包する器であり、儀式的な力を宿した存在です。
仏教経典や民間信仰に着想を得ながら、文字を分解し再構築することで、
感情や無意識の領域を視覚化しようとします。
本ビエンナーレに出品された《隠された記憶》シリーズは、
手描きの線や文字、手作業で切り抜いた紙片などが幾重にも重ねられた作品群です。
深い色調の背景の上に、反復されるように配置された形や線。
一見すると単調にも見えるその画面の奥には、
静謐で祈りのようなエネルギーが濃密に宿っています。
一つひとつの作品は、瞑想のような行為の中から生まれました。
内省的な鍛錬のプロセスを経て導かれた筆致や切り込みは、
見えない感情や記憶を呼び覚ます〈霊的な共鳴の痕跡〉です。
《隠された記憶》は、派手な啓示ではありません。
それは、静かに心を揺り動かすビジュアルによる祈りの形。
言語ではなく感覚によって語りかけ、
私たちの中に眠っていた感情の余韻をそっと呼び戻します。
ビエンナーレのテーマ「文明の隣人たち」に呼応するように、
オ・ユンソクの作品は、〈自分自身の内にある隣人〉と出会うことを促します。
忘れ去られた感情、潜在するエネルギー、そして癒しの可能性——
それらはすべて、私たちの内に静かに存在しているのです。
ここでアートは、呼びかけとなり、
静寂と気づき、そして再生への〈捧げもの〉となるのです。