無題
ジョン・ヒョン (Chung Hyun)
ジョン・ヒョン(Jung Hyun)は、廃棄された素材と人体像を組み合わせた彫刻的形態を通して、存在・時間・記憶というテーマを長年探求してきたアーティストである。
初期の活動は、解剖学的に精密な人体彫刻から始まった。しかし時間の経過とともに、彼の関心は形そのものから、形を構成する「素材の物質性」へと移っていった。
アスファルト、コールタール、鉄筋、練炭——かつて産業文明の中心を担い、今では廃れたこれらの素材は、彼の手によって再び人間の姿として生まれ変わる。それらは単なる屑やゴミではなく、文明の残滓であり、人間の欲望の痕跡でもある。
2025年の全南国際水墨ビエンナーレにおいて、ジョン・ヒョンは彫刻だけでなく、大規模な水墨ドローイングも発表する。彼にとってドローイングは最も正直な視覚言語であり、感情と思考を直接的に画面へと解き放つ行為なのだ。
彼の作品は、傷ついた形や壊れた物質に尊厳を取り戻し、廃棄されたものを「存在の記憶」へと変容させる。
そして、ジョン・ヒョンは私たちに静かに問いかける。
「私たちは何を捨て、何を記憶として選び取るのか?」
彼の作品の前に立つと、観る者は自らの人生、そして私たち全員が生きるこの文明について、そっと思索へと誘われるのである。