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「石蘭図屏風」
石坡李昰応 筆先に咲いた蘭花、権力の外の孤独
この優雅な蘭花を描いた人が誰か知っていますか?興宣大院君李昰応です。19世紀朝鮮を揺るがした政治家が静かに筆を握って花を描きました。

1820年生まれの李昰応は激動の時代を生きました。西洋列強が朝鮮の門を叩き、政治的葛藤が絶えない時期、10年間実質最高権力者として国を導きました。

なぜ権力の頂点にいた人がこのような素朴な蘭花を描いたのでしょうか?
この屏風形式の石蘭図を見てください。八幅にわたる蘭花と岩、各幅異なる構成ながら一つの物語として繋がります。人生の様々な瞬間を見せているようです。

蘭花を詳しく見てください。葉は風に曲がれど折れず、花は小さいながら堂々としています。東洋文人画で蘭花は「四君子」の一つ、高潔な人品と不変の節操を象徴します。

彼の筆遣いに注目してください。政治演説とは正反対—誇張なく、騒がしくなく、淡白です。墨の濃淡だけでこれほど生き生きとした生命力が感じられます。

隣の木蓮図も同様です。華麗な彩色なしでも優雅な花を描き出せます。木蓮の柔らかな花弁と枝の強靭さが対照をなします。

李昰応にとって絵画と書法は権力から一時離れる唯一の自由時間でした。政治的計算でなく、真の内面と向き合う瞬間でした。

蘭花の香りは遠くまで広がります。李昰応の政治業績は論議がありますが、これらの絵は時代を超えて静かな感動を伝えています。権力は消えても芸術は残る—彼がそれを直接示しているのです。